障がい者雇用に関する情報
「障がい者雇用のパイオニア」というプライドと共に
日本のみならず、全世界で事業を展開する特殊ガラスのリーディングカンパニー、日本電気硝子株式会社。その特例子会社である電気硝子ユニバーサポート株式会社は、 1980 年に特例子会社として全国6番目に設立された障がい者雇用のパイオニアです。ここでは、同社の障がい者雇用の内容やその中で大切にしていることなどについて、お話をお伺いしました。
今回取材にご対応いただきました、
電気硝子ユニバーサポート(株) 代表取締役専務 千坂貴様(左)
電気硝子ユニバーサポート(株) 業務本部⾧ 鹿城和彦様(右)
電気硝子ユニバーサポート様の業務について教えてください。
当社の親会社である日本電気硝子は特殊ガラスメーカーであり、製造・販売しているガラスや関連製品は、世界シェア2割を占める規模となっています。そして 72 名の障がいのあるメンバー(2024 年 10 月1日現在)と共に日本電気硝子の業務をサポートしている当社ですが、設立は 1980 年6月、全国6番目の特例子会社として誕生しました。なお、業務は主に次の内容になっております。
・清掃作業(トイレ、食堂、各部署の通路、会議室等)
・ワックス掛け(食堂、各部署の通路、会議室等)
・クリーニング(作業服・無塵衣等)
・緑化(花苗育成、構内・周辺の緑化)
・縫製(軍手、厚生施設シーツ等)
・社内メール便業務
・印刷業務
・環境プラントの水質管理、騒音・粉塵の測定
・白線引き(構内、駐車場等)
・廃棄物の運搬処理作業
・保管書類資料の PDF 化、ポジフィルムのデータ化
障がい種別としては、おおよそ 6、7 割が知的障がいの方であり、加えて身体障がい、精神障がいの方が活躍しています。グループとしての障害者雇用率は 4%前後で推移をしており、現在の法定雇用率を大幅に上回るスコアを達成しています。ただ、1980 年という非常に早い段階から日本の障がい者雇用をけん引してきた自負のある当社としましては、まず障がい者雇用率を 4.6%を達成したいと考えております。
業務風景
障がい者雇用において心がけていることは何でしょうか?
やはり、メンバーにはできるだけ長く勤めて欲しいと思います。長く働いてもらうためには、心身共に安心感のあるそういう職場にしていかなければなりません。具体的には、次の内容を大切にしています。
①日々のコミュニケーション
当社では障がいの有無等、様々なメンバーが混成チームで仕事しています。当然のことながら、障がい者同士や障がい者と健常者との間でのコミュニケーションがスムーズでないと事業が立ち行かなくなってしまいますし、離職も増えていきます。だからこそ、会社全体のコミュニケーションを円滑にするように努めています。例えば主に朝礼や終礼時を活用したコミュニケーション、「挨拶をしましょう」「良いことをした方を表彰しましょう」「さん付けで呼びましょう」など、職場全体の垣根を取り除くような取り組みがあります。
②ナチュラルサポートの強化
障がい者が業務を進めていく上で、障がい特性からどうしても健常者の水準とのギャップが出てしまう場合があります。「ナチュラルサポート」とは、健常者がそのギャップを埋め、障がい者をしっかりとサポートして共同しながら業務を遂行していくという基本的な精神・考え方です。健常者のメンバーはこれを頭の中に据えながら、仕事を進めていかなければなりません。
③問題トラブルの早期発見、早期解決
また、「障害者職場定着推進委員会」を設置し、職場定着のための阻害要因をできるだけ無くすよう、これの早期発見、早期解決に努めています。
④全社的啓蒙
会社全体として障がい者雇用に対する意識付けをしていかなければならないと考えています。そこで、年に1回の会社主催の懇談会や、共済会という従業員の福利厚生を行う組織が主催するイベントなど、さまざまなコミュニケーションの場を創出しています。加えて、経営トップからのメッセージ発信も活用しています。
また、関係機関との連携も重視しています。障がいのあるメンバーにせっかく入社してもらっても、どうしても合わなくて辞めてしまうケースがあります。トラブルを起こしてしまうこともあります。メンバー同士のトラブルは、場合によってはその障がい特性に起因するものがあります。だからこそ、地域のハローワークや障がい者就労支援機関、各種支援学校等と連携しながら問題解決に当たっています。
ユニバ―サポート6つの「約束」(電気硝子ユニバーサポート HP より)
障がいのあるメンバーのキャリアアップについて教えてください。
2015 年に「ジョブサポーター」という役割を作り、優れた障がい者メンバーをジョブサポーターに任命し、チーム内でリーダーとしての役割を果たしてもらっています。障がい者がリーダーになることで、作業をしているメンバーは相談がしやすく、コミュニケーションもよく取れるというメリットがあります。また、障がい者目線での職場の改善も大きく期待でき、風通しも良くなるということもあります。さらに、その制度をブラッシュアップし、ジョブサポーターという業務を定量的な目線でしっかりと評価し、処遇に反映させる「ジョブサポーターキャリアアップ制度」を 2021 年にスタートしました。これによって障がい者メンバーがキャリアアップの目標として、ジョブサポーターを目指すといった動機づけも生まれています。
「ジョブサポーター」について詳しく教えてください。
ジョブサポーターには、グレードが4段階あり、最初は0(ライン無し)からスタートし、次はラインが1本、次はラインが2本、次はラインが3本とグレードが昇格します。昇格をしていくためには毎年一回、評価試験があり、試験に通らなければ昇格できないし、その時の試験だけではなく、年間通してのいわゆる定性的な評価があります。その(試験の)時のスコアだけが良かったらいいというわけではなく、毎日の作業も高いパフォーマンスを発揮することが求められます。さらに、仕事の技量だけでなく、メンバーをまとめる力といったことも含めて評価対象となるので、かなり厳しい制度となっています。
さらに、一旦上がったら、その後は下がらないのかというと、そういうわけではありません。翌年のスコアが悪いと、ライン2本からライン1本、0本に降格することも当然あります。そのため、ジョブサポーターのメンバーは日々、その役割の重責をしっかりと意識しながら仕事をしているのではないかと思います。ちなみに、ライン3本を3回クリアすると、ジョブサポーターを卒業し、「ジョブマイスター」という最上位の役職に就くことができます。一旦「ジョブマイスター」になれば降格はありませんが、一層、指導的な立場での役割と責任が求められます。
今後の課題について教えてください。
数年前までは、ハローワーク等に募集をかけて採用するという形が基本でしたが、近年では新卒の採用に力を入れ始めています。並行してハローワークにも募集をかけたり、支援機関からのご紹介を受けたりもしています。ただ、仕事内容とマッチする方が以前と比べて少なくなってきている印象です。そこで、可能な限り様々な職域を開発する必要があると感じています。職域の中で一番多いのがオフィスの清掃作業やワックスがけなど、清掃業務に相当するものですが、特に最近の若者の就労のニーズは、例えばものづくりや商品管理への関心が強くなっています。今後は、そういった若者のニーズにちょっとでもマッチできるような職域を開発していかなければならないと考えています。
これから障がい者雇用に取り組む企業へのメッセージをお願いします。
各支援機関やハローワークからアドバイスをいただきながら進めていく、というのがまずは肝要ではないかなと思います。メンバーの離職を防止しようと思ったら、プライベートを含め様々な問題に対してきちんと対応していかなければなりません。どうしても自社だけでは難しい点が多いので、関係先との連携が必要になってくるのです。採用という面でも、支援学校との連携を図る必要があるでしょう。
加えて、障がい者雇用に対する会社としてのスタンスを明確にしておくことも重要です。幹部自身がそれをしっかりと理解し、全社を巻き込みながら進めていっていただければと思います。
電気硝子ユニバーサポート株式会社について
住所: | (本社)〒520-0834 滋賀県大津市御殿浜12番17号 (事業所)大津事業所(滋賀県大津市)高月事業所(滋賀県⾧浜市) 能登川事業所(滋賀県東近江市) |
設立: | 1980年6月2日電気硝子興産株式会社 2004年6月2日 電気硝子ユニバーサポート株式会社に社名変更 |
資本金: | 5,000 万円(日本電気硝子株式会社 100%出資) |
従業員数: | 174名※(2024年6月1日現在) ※うち障がい者72名 (内部障がい5名、肢体不自由10名、聴覚言語障がい3名、知的障がい48名、精神障がい6名) |
会社ホームページ | https://www.us-neg.com/ |
日本電気硝子株式会社についてhttps://www.neg.co.jp/